ARTISAN SPIRITS
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第2弾「ARTISAN SPIRITS」 後半

前半に引き続き、後半では製品の完成までご紹介します。


新製品の開発(2) 型取り、試作品を経て型の完成へ

ところで、身近な型といえば製氷皿やお菓子作りに用いる焼き型などを思い浮かべるかもしれない。 凝った形状のものが数多く市販されているが、氷にせよお菓子にせよ、細部まで形良く作ろうと思ったら、 材料や作る手順だけでなく、型が重要であることは容易に想像できるだろう。

型の数々

マスターに吹き込まれたあらゆる要素を受け継ぐ型もまた、職人の手作業で作られる。

形状によっては割り型作業が必要に。
割り型のイメージ図

例としては極端かもしれないが、右の絵は球体をマスターに見立てた場合に作る割り型のイメージである。 1つの球体を複製するために、2つの型(青とオレンジの部分)が必要になる様子を示したが、割り型作業とは、即ち最適な型取りのために分割をすることである。(写真下)

根石光さん

この工程は、サイドステップやトランクスポイラーなど、筒状の形状をとるパーツに必要だ。どのように分割するのか、これもまた製品の品質に関わる重要な要素だ。

写真左は、割り型への積層(積層の詳細は試作品の製作過程にてご紹介します)後、二つの割り型を合わせている様子である。


型取りをする。(FRP型の製作)

前述の球体の例では、半球状の2つの型を示したが、まさにこの2つを作る工程である。この2つが作られれば、まったく同じ形状のものが複製できることになる。
型は、マスターの表面を覆うようにしてFRPで作られる。後述する試作品の製作や、製品の製造過程と同じようにマスターの表面へ積層をするのだが(積層の詳細は試作品の製作過程にてご紹介します)、型には特に強度、精度、内側の面の美しさが求められる。

小さなパーツへの積層

もしも強度が不足すれば、製品は歪んでしまい、型そのものがすぐに使えなくなってしまう。精度が甘ければ、もはやマスターと同じ造形は不可能である。内側が滑らかでなければ、製品の表面は決して美しく仕上がらない。
つまり型は、マスターの美しさを完璧に引き継いで、かつ強くなくてはならない。 写真右のような比較的小さな型から、バンパーのように大きな型まで、それは同じことである。


台座を取り付けた型のイメージ図

マスターの表面に成形されたFRPを、マスターから外すと、作業性を考慮し台座などが取り付けられる。(図右のイメージ)
ただし、型が完成するのはもう少し先である。


型から試作品を作る。

試作品は実際の生産過程と同じように作られる。
まず、前の工程で作られた型の内側にゲルコート(*1)を吹き、硬化後にガラスマット(*2)を敷く。 ここへ硬化剤を混ぜた樹脂(*3)を含浸し、硬化させる。これを何層か重ねることで十分な強度を持つFRP(*4)が完成する。
以下に示すイメージ図は非常に単純であるが、実はこれらの作業は緻密な計算によって導き出した最適解に基づいて行なわれている。

(*1)ゲルコート:ゲル状の樹脂。型の内側に吹き付けるもので、脱型後には製品の表面を覆うコーティングとして塗装の際の下地となる。
(*2)ガラスマット:ガラス繊維を束ねて絡み合わせたシート状のもの。
(*3)樹脂:高分子化合物の一種。ここでは熱硬化性樹脂という、熱によって硬化する樹脂を指す。逆に、熱によって軟化する熱可塑性樹脂がある。
(*4)FRP:繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics)といい、多くはガラス繊維で強化された樹脂の総じて呼称される。
積層

硬化剤を混ぜた樹脂、ガラスマット、脱泡

右の写真(上段)は硬化剤を混ぜた樹脂であるが、この硬化剤の割合もまた製品の品質に大きな影響を及ぼす。多過ぎれば発熱し、製品は歪んでしまう。 もし型をも歪ませてしまえば、型から作り直しである。最悪の場合、発火することもある。 硬化時間が速過ぎて丁寧な作業が出来ない恐れもある。逆に少な過ぎればなかなか硬化しない。

写真(中段)はガラスマットを敷き詰めている様子である。ミクロン単位の細いガラス繊維が複雑に絡み合い、素手で触っていると一時的にチクチクすることがある。 このガラスマットの層の数もまた、重要な要素である。厚みを出せばその分強度が増すが、重たくなってしまう。薄ければ当然強度不足となる。

しかし何より気を遣うのが、写真(下段)の作業だそうだ。これはガラスマットに樹脂を含浸させた直後に、ローラーで空気を抜いている(脱泡)ところである。(写真の右側が脱泡後の様子、左側が脱泡前の様子) 樹脂が反射して写っているためやや分かりにくいが、右側のほうが左側に比べて繊維が見えにくくなっている。 繊維同士の隙間に入り込んだ空気がきれいに抜けている証拠だ。この脱泡が疎かになると、強度の低下に加えて目に見える悪影響が出てしまう…つまり見た目が悪くなってしまうそうだ。


古川博將さん

重要なことはまだある。ガラスマットに含浸させる樹脂の量である。これは量を増やすことで強度が上がるというわけではないそうだ。 あくまでも適量を均一に伸ばし、きっちりと空気を抜くことが重要だという。
その後は、熟練の職人の手を一旦離れ、適切な硬化時間を経て脱型となる。


脱型直後の型とFRP

※試作ではなく生産の過程であれば、脱型後は仕上げの工程へと移る。


試作品を型から外し、フィッティングを確認。実はここからが「型」の仕上げ。
ケガキ

脱型した試作品を用い、フィッティングを確認する。 ボルトナットやクリップを使って純正品と同等に装着できるかを念入りに確認するという。 確認をし終えると、試作品は一旦型に戻される。そして、型の内側に取り付け穴の位置や、カットライン(型から外したFRPの余分な部分を切り落とすライン)を 示すケガキを入れてようやく型の完成となり、生産ラインへと移行することができる。


生産

これまでは「新製品の開発」に触れてきた。ここからはいよいよ「生産」である。

妥協なく作られた最高の型への積層。

世に送り出される製品の生産はここがスタート地点である。取材で訪れた時は、まさに出来上がったばかりの型により、製品第一号の生産が始まろうとしていた。 型の内側は美しく磨かれ、工場内の明かりを反射していた。

型の内側

写真左は、完成した型の内側を映したものである。

─ 型が光っていれば、型から外した製品もそこが同じように光ります。これ(表面の光沢を指し示す)は、そのまま製品に反映されるんですよ。

この型が、積層のために別の部屋に運ばれていくと、見ていた筆者も思わずこみ上げるものがあった。
積層は、試作品の時と同じ手順で行われる。完全に硬化し、取り外すまでには、およそ一週間。

製品の仕上げ。

型から取り外すと、いよいよ仕上げの工程となる。

製品に写されたケガキ、仕上げ前後

試作品では、この段階でフィッティングを確認して型にケガキを入れていたが、このケガキが、今度は製品表面に浮き上がるように示される。
左の写真(上段)は、ナンバープレートのフレームのカットライン。これは完成状態が浮かぶ人も多いのではないだろうか。
仕上げ工程では、まず最初にこのカットラインに沿って余分な部分を切り落とし、そのラインを歪みなく整える。次いで取り付け穴を開け、必要に応じてナットサートなどの固定金具を取り付ける。

写真(中段)の仕上げ後を見ると、ボディ(この場合はフロントバンパー)接地部分の絶妙なカーブが綺麗に切り取られているのがわかる。

写真(下段)は、実際にフロントバンパーに合わせてみた様子である。ピッタリと接地していた。
型の内側がそうであったように、表面はやはりツルツルとした滑らかな感触だった。近いうちには、オーナーの好みの色で塗装されるだろう。きっと美しく映えるその色の、下地もまた美しいということを、知って欲しいと思わずにはいられない。


岸本哲博さん

見目裕介さん

すべてのパーツが、ひとつひとつ丁寧に仕上げられていく。
パーツにもよるが、積層から仕上げまでにかかる時間は、およそ2週間。何人かの職人の手を経て、ようやく完成となる。


高品質な製品を届けるために、一気通貫で考える。

自分の担当する工程で何が重要なのかというだけではなく、その次の工程で何が行なわれるか?を念頭におく。 さらに自社の範囲を超えて、取り付け・塗装業者の手間までをも考える。何より、オーナーのことを想う。

鷺信崇さん

アーティシャンスピリッツといえば、デザイン、フィッティング。
職人は口を揃えて言う。

─ (自分の)この工程は製品の良し悪しを決めるところだから。…まあ、他の人のもそうですけど…。
職人の手の痕跡

製品にある証の持つ意味は、とても深い。取材を通してずっと感じていたことだが、一人ひとりがその時の工程の重要性をとことん見つめている。そして誇りとプライドを持っている。
カッコイイのはエアロパーツだけじゃない、ここの人たちだ。




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