アートパーツのスタッフが訪問し、見て、聞いて、触れてきました。職人の手で生み出される本質とは?
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第1弾「Leather Custom FIRST」

アートパーツのスタッフが、革巻き加工・カスタム・レストアの専門店「Leather Custom FIRST」さんを訪問してきました!密着取材の成果として“職人の仕事”をお見せします。


クルマの内装における"本革仕様"には様々あるが、シート、ステアリングといったパーツの様々ではなく、色や質といった様々でもなく、 一体誰が作ったのか?に思いを巡らすことはあるだろうか。

多くのクルマは、大規模で能率的な工場で画一的に生産される。このため、「これは、職人の手作業なんです。」などと言われると、 ただそれだけで特別な充足感を得られるような気がしないだろうか。
しかし職人もまた様々である。

「これが正しい作り方というような、決まった方法はないんです。」と、代表の渡邉さん

雄大な富士山の麓に工房を構える、
革巻き加工・カスタム・レストア専門店「Leather Custom FIRST」“匠”であり代表の渡邉文洋さんを訪ねた。


工房の様子

整然と並べられた本革の在庫、革漉き機、ミシン、作業用の机。 窓から差し込む柔らかな光で工房全体は明るく、清潔感に溢れている。
一番大きなテーブルには、完成間近のものと思われる商品がおかれていた。 触れないように覗き込むと、渡邉さんが苦笑いした。

─ それは最初からやり直しなんです。

いきなり衝撃的だった。どこが悪いのか理由を訊くと、縫ってみたら革が弱い部分があったのだと言う。 つまり完成間近なのではなくて、これから糸を解き、革を全て剥がすところだったらしい。

─ 天然皮革ですから、必ずしも均質ではないので、こんなこともありますよ。

入荷する革の品質は、特徴的なものとして、虫刺されや焼き印などの個体差のほか、どのような気候下で加工されたかによっても左右される。 品質を第一に考えるFIRSTとしては、一枚をまるごと返品せざるを得ないと判断することもあるそうだ。


取材では、レクサスISのステアリング革巻き加工を依頼

さて、なんと今回は、渡邉さんのお仕事を2泊3日で密着取材した。
取り上げるのは、レクサスIS(平成20年(MC後))のステアリングの革巻き加工である。

« 小話 »
今回取り上げる車両のステアリングは、純正仕様の状態で2本糸で縫製されているが、同車種の現行モデルは、1本糸での縫製に変更されている。
当然、現行モデルの方がコスト削減の点で貢献しているが、見た目で劣る点は否めず、少し残念である。
採寸と型紙の制作

初めてオーダーを受ける場合は、型紙の制作から始まる。 既に革を剥がし終えたステアリングを採寸し、型紙用の革を裁断する際の寸法を決定していく。

型紙用の革とは?

─ 型紙は、加工時の革の伸びやシワなどを考慮した最適な形で作成します。 その型紙を作るため、実際の革で型をとるんです。 最初は2倍の材料が必要になりますが、結果的に無駄の無い裁断が可能になりますし、仕上がりもキレイです。
ステアリングの採寸

つまり、精度の高い型紙を作るために、型紙を作る目的だけで革を裁断するということだ。

(写真左:寸法を測る渡邉さん。)
(写真下:寸法通りに切り取られた革。)


型紙を作る目的での、革の裁断

この革を現物のステアリングに合わせて、型をとっていく。

型紙を作る目的で裁断した革を、現物のステアリングに合わせて型をとる

出来上がった型は、少し不思議な形をしている。この型は、型紙が完成したら不要になるのだそうだ。(写真下は、平らにしたところ。)

型となった革

型から型紙へ

型紙に使用する厚紙は、湿気などに強い特殊なもので、一度作成したら長期間保管する。 同一のオーダーが入れば、型紙を使って革を裁断する。

現在、どれくらいの数を保管しているのかと訊いてみたが、怖くて数えたことが無いそうだ。 確かに、その一部を拝見したが、少なく見積もっても数百は超えそうな量である。


出来上がった緻密な型紙

型紙が既に美しいですね。

─ 型紙を見ると分かりますよ。作る人によって、この時点で形すらも違います。

センス、なんですね。

─ より多くの経験を積むことは大切ですが…正直、できない人は100回やってもできないし、10回でできる人もいる、そういうもんです。

数センチのズレで厚みや強度が異なる。それを見極めるのもまた、長年の経験とセンスなのだろう。


裁断

渡邉さんの奥さんが、広げた革をじっと見つめながら、印のようなものをつけていた。

何をなさってるんですか?

─ 状態の良くない部分を確認しています。例えばこのあたりは、使いません。
革のチェック

一体何が悪いのか分からず近くに寄ってみると、そこにはほんの小さな黒い点があった。 白い線は、裁断する際にこの部分を避けるための印だ。(写真左)

先程の型紙をあてて型を写し取ると、いよいよ裁断である。 まず大まかに裁断した後、奥さんが革を並べてくださった。これで1つ分、である。(写真左下)
型通りに裁断され、糸を通す穴も開けられると、いよいよ縫製に入る。(写真右下)


裁断された、ハンドル1つ分の革。計4パーツ

縫製

パーツの縫製

裁断された4つのパーツは、縫い合わされて1つの輪になる。
これをステアリングにかぶせてみると、縫い合わせた部分の厚みが、ステアリング本体の窪みにぴったり落ち込むのが分かる。(写真下)

ここまでの全ての作業が、いかに正確で丁寧に行なわれてきたか、何よりの証拠じゃないだろうか。


« 小話 »
ステアリング本体の窪みは、実は最初からあったものではない。 革を剥がした直後の写真(右下、加工前)に微かな跡が確認できるが、この部分に渡邉さんが切り込みを入れて作ったものだ。(右上、加工後) 実は純正状態において、縫い合せ部分が盛り上がり、滑らかとは言い難い状態になっていた原因は、この窪みがなかったことにあった。 これには渡邉さんも驚かれた様子で「縫い代を取りすぎたせいで膨らんでいるのかと想像していた」と、首を傾げた。 ※窪みが無い場合は、革を漉いて厚みを調整することでフラットになるよう加工することも可能。
縫い合わせた革をステアリングへかぶせる

手作業で縫い合わされていく

糸は、テンポよく均一な力で通されていく。 縫い目にフォーカスすると、見ていてとにかく気持ちが良い。



仕上げ

増し締めし、革の接着も最終段階へ

渡邉さんの目が特に厳しくなる工程だ。
糸を増し締めし、革の接着も最終段階へ入る。


全ての箇所で接着し終えると、さらにドライヤーの熱とハンマーを用いて、しわの表情を整える。
縫い目の膨らみを慣らし、手で握ったときの凹凸感を和らげる。
これら全てが、革の種類や状態、温度湿度によってさじ加減が変わる。

渡邉さんの良い塩梅が、最高の品質を生み出していく

完成間近のステアリング

ハンマーの音が、完成までのカウントダウンのように聴こえてくる。
革の自然な風合いを損なわないように、触れる部分は滑らかに。

商品が届き、箱を開けた時の感激は、こうして生み出されるのだ。


完成

ステアリングスイッチ、エアバッグシステムを取り付けると、完成である。
凛とした上品さに、思わず息を呑みこんだ。

完成したステアリング(全体)

今回取り上げた車両は、元々革巻きのステアリングではあったが、抱く印象の差は歴然としている。 実際に装着してみると(写真下)、ステアリング下部の革をシートのカラーに合わせたことで、運転席の印象が軽やかになり、より女性らしいトーンへ変貌している。
それでいて、最も手が触れる部分に黒のディンプルを採用したことで、このクルマらしいスポーティさは失っていない。

完成したステアリングを実際に装着



お約束の(?)ビフォー・アフター。(左:施工前/右:施工後)

左:施工前/右:施工後

ひとつひとつの製品に込められた、確かな技術と愛情

工程の一部を担当される奥さんの笑顔

事務的な仕事だけでなく、工程の一部も手際よく器用にこなす、渡邉さんの奥さん。不用意にカメラを意識させてしまったのだが、優しい笑顔をくださった。
渡邉さんについては「普段はもっと怒るし厳しいのだけど…取材だから…?」とのこと。


スタッフと談笑する渡邉さん

全ての工程が終わった後、アートパーツスタッフと談笑する渡邉さん。
良いモノとは何か?積み上げてきた経験値が、言葉の重みともなる。似たようなものも多く存在する世の中で、本質を見つめて仕事をする職人が 生み出すモノには、芯の通った価値がある。



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